レグルス王国の物語

赤ちゃんはなぜ泣くのか? ― “泣く”の正体と、私たちが忘れた感情の境界線

🎥空飛ぶバスで泣く女の子に、泣きながら“落ち着いて”と想う赤ちゃん


バスや電車に乗っていると、赤ちゃんの泣き声を耳にすることがあります。
多くの人は「静かにしてほしい」と感じる一方で、親は「ごめんなさい」と謝る。
けれど、一番混乱しているのは、きっと赤ちゃん自身です。


「心と体が離れていく感覚がする。
境界線が見えなくて、自分がどこまでか分からないんだ。
でも泣いてる子がいる。僕じゃない。だから、守らなきゃ。」


──もし赤ちゃんが、そんなふうに感じていたとしたら?

今回は、「赤ちゃんがなぜ泣くのか」を心理学・生理学・哲学の観点から掘り下げていきます。


第1章:赤ちゃんは“泣きたい”のではなく、“伝えたい”

赤ちゃんは生まれた瞬間から、身体感覚と世界の境界線が曖昧な存在です。
お腹がすいた、寒い、怖い、寂しい──それらをまだ「言葉」で分類できない。
そのため、唯一使える手段が「泣く」ことなのです。


ただし重要なのは、泣く=感情の発散ではない、という点。
実は泣くことは「伝達の原始形態」であり、“SOS”という言語のプロトタイプです。
つまり、「泣く」は「助けて」でも「愛して」でもなく、
「存在していることを確認したい」という最初のコミュニケーション。



第2章:泣く理由は“混乱”から始まる

生後まもない赤ちゃんは、自分と世界の境界線が曖昧です。
温度、光、音、匂い――あらゆる情報が「一気に流れ込んでくる」。
それは、私たち大人にとっての五感の洪水のような状態。


つまり、赤ちゃんは「うるさい」や「怖い」と感じる以前に、
「何が起きているか分からない」という“混乱”を感じています。
このとき、脳内では自律神経がフル稼働し、体は防衛反応として泣く。
泣くことで呼吸を整え、酸素を取り込み、体をリセットしているのです。



第3章:私たちはいつ“泣くこと”を忘れたのか?

成長するにつれ、私たちは「泣かないことが良いこと」と教えられます。
けれど、泣く=自己調整機能を封じることで、
本当の自分の感情が分からなくなってしまうこともあります。


赤ちゃんの泣き声にイライラするのは、
もしかしたら自分の中の「泣けなかった自分」を見ているからかもしれません。
泣くことを抑えた記憶が、無意識のうちに反応しているのです。



第4章:泣き声の意味を“翻訳”する

心理学的には、赤ちゃんの泣き方は5種類以上あるとされます。

親がこの“翻訳辞書”を少しでも知っているだけで、
「泣いて困る」から「泣いて教えてくれる」へと意味が変わります。



第5章:赤ちゃんの泣き声にできること

赤ちゃんが泣いたとき、静かに共鳴してあげることが最も効果的です。
「泣かないで」と抑えるより、「どうしたの?」と声の方向性を合わせる
これは脳科学的に、赤ちゃんのミラーニューロンを安定化させる効果があります。


また、抱っこやゆらぎのリズム(1/fゆらぎ)は、
母体内で聞いていた心音リズムに近く、赤ちゃんの不安を減少させます。

つまり、泣き声を止めるのではなく、整えることが本質です。



結論:「泣く」という言葉をもう一度、信じてみよう

赤ちゃんの泣き声は、“不快の音”ではなく、“存在の証”です。
彼らは「泣きたい」のではなく、「感じていることを伝えたい」。
そしてそれは、私たち大人が忘れた心の原点でもあります。


次にバスや電車で赤ちゃんが泣いたとき、
どうか少しだけ想像してみてください。
「この世界、揺れてる。僕が動いてるのか、世界が動いてるのか分からない。
でも泣いてる子がいる。僕じゃない。だから、守らなきゃ。」


泣くことは、心と体をつなぐ、最初の祈りなのかもしれません。


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